アスペルガー症状

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アスペルガー症状

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「アスペルガーの症状」特徴的な症状を理解して適切な対応を

公開日
更新日

 
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)、須賀 香穂里(ヘルスケアライター)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
アスペルガー症候群は知的な遅れのない自閉症ともいわれる、今では自閉症スペクトラムと呼ばれる発達障害のひとつです。
 
では、社会にアスペルガー症候群の方はどのくらいの割合でいるのでしょうか。
 
諸説あり、100人に1人(1%)とも、1,000人に1人(0.1%)とも言われています。
 
このようにアスペルガーである人の割合がはっきりわかっていない理由としては、ADHDなどの他の発達障害と合併しておりその症状に気づいていなかったり、アスペルガーの症状を精神疾患と誤診されたりされることが挙げられます。
 
ここでは、意外と気がつかないこともあるアスペルガー症候群の主な症状や特徴、原因等幅広い視点から解説します。
 
 

目次

アスペルガーとは

 
アスペルガー症候群は自閉症スペクトラムと呼ばれる発達障害の一種です。
 
アスペルガーとは 高機能自閉症と同様に知的障害は伴わないものですが、コミュニケーションが苦手で、対人関係に問題を抱えがちです。
 
アスペルガーの人はその特徴のために社会にうまくなじめず、学校や会社でトラブルを起こしてしまったり、辛い思いをしてしまうことがあります。アスペルガー症候群は100人に1人、または1000人に1人と言われるそれほど珍しくない発達障害です。
 
 

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医師ハンス・アスペルガーの発見

 
アスペルガー症候群の症状に初めて注目したのはオーストラリアの小児科医、ハンス・アスペルガーでした。

 

彼は1944年に「小児期の自閉的精神病質」という論文を発表しました。
 
これは自閉症の症状を示すものではなく、あくまで自閉「的」症状に言及したものでしたが、彼の論文より前に発表されていた乳幼児の自閉症に関する論文が当時の医学会で大きな影響力を持っており、アスペルガー医師の論文はあまり注目されませんでした。

 
彼の論文が注目されるようになったのは、1981年に児童精神科医ローナ・ウィングが彼の業績を紹介したときです。

 
当時、自閉症は、対人関心が非常に乏しく言語コミュニケーションが限られている子どもにのみ診断されていました。
 
しかしウィング医師は、自閉症と診断されていないにも関わらず「社会性・コミュニケーション・想像力」の3つの側面に問題を抱える子供がいることに気がつき、その症例がアスペルガー医師の紹介したケースに似ていることを指摘したのです。
 

その結果、1981年以降にアスペルガー症候群は徐々に注目されるようになりました。

 
 

アスペルガーの特徴的な症状とは?

 
米国精神医学会による『DSM-4(『精神疾患の分類と診断の手引き』)』によれば、アスペルガー症候群と診断されるには以下の条件に当てはまる症状があることを必要とします。
 

  • 人とのかかわり方に問題がある
  • 限られた興味や行動、同じ行為を繰り返す
  • それらの特徴によって日常生活に支障をきたしている
  • 言語や認知の発達に深刻な遅れはない
  • 他の広汎性発達障害や精神疾患の基準に当てはまらない


 
中でもアスペルガー症候群に見られる代表的な特徴や症状は、「対人関係の問題」と「限定された興味・こだわり」です。
 
 

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対人関係の問題

 

空気を読むのが苦手

 
アスペルガー症候群の人は空気を読んで行動することが苦手です。
 
例えば、いつも一緒にいる友達がなんだかイライラしているなと思ったら、私たちはなるべくそっとしておくか、気遣って相談に乗るか、いつもと違った対応の仕方をすると思います。
 
しかしアスペルガー症候群の人は、他人の気分を察したり、相手の状態によって行動を変えることができません。
 
だからイライラしている友達の前でいつも通りに振る舞って、いつものように冗談をいって友達をからかったりします。
 
そうして友達を怒らせてしまい、「今はそんな気分じゃないの」「放っておいてよ」と言われても、「いつもはこれくらいで怒らないのになぜ今日は怒るのだろう?」と、友達を怒らせてしまった理由がわかりません。
 
 

他人立場に立って考えられない

 
「自分がされて嫌なことは他人にもしない」というのは小さいころに教えられますね。
 
しかしアスペルガー症候群の人にはこれが実行できません。というのも、彼らは自分の行動や言葉によって他人がどう思うかを想像することができないという症状があるのです。
 
例えば、自分が「太っているね」と言われるとすごく怒るのに、自分は他人に対して「太っているね」と素直に言ってしまいます。これで言われた人が怒りだしても、「本当のことを言っただけなのに…」となぜ怒られているのかがわかりません。
 
アスペルガー症候群の人は、思いついたことを思慮深く考えず、正直に口に出してしまう傾向があります。しかし彼らには全く悪気はないのです。
 
 

言葉の意味をくみ取るのが苦手

  • 「お母さんはいますか?」(家に電話がかかってきたとき)
  •  

  • 「今日のご飯はお鍋よ」
  •  

  • 「そのダジャレはとっても寒いよ」

 
 

上の3つのセリフを見て、このセリフがどう意味なのかを考えてみてください。おそらく、多くの人は上から順に、以下のように解釈するでしょう。
 

  • 「お母さんはいますか?」⇒「お母さんは家にいますか?」
  •  

  • 「今日のご飯はお鍋よ」⇒「今日はお鍋料理(水炊きなど)を食べるわよ」
  •  

  • 「そのダジャレは寒いよ」⇒「そのダジャレはあんまりおもしろくないよ」

 
 

しかしアスペルガー症候群の人は、「お母さんはいますか?」と聞かれて、家にお母さんがいてもいなくても「います」と答えます。何故なら、彼らはこの質問「(あなたには)お母さんがいますか?」という文字の意味そのままに受け取ってしまうからです。
 
だから「今日のご飯はお鍋よ」と言われて「鍋そのものを食べるのだ」と思ってしまったり、「そのダジャレは寒いよ」と言われて防寒用の毛布を用意してくれたりします。
 
 

会話のキャッチボールが苦手

 
会話は、利き手と話し手が相手の様子を見ながら交互に入れ替わることで成立します。
しかしアスペルガー症候群の人はこのルールがわからないというのが、特徴的な症状です。
 
アスペルガー症候群の人は自分が話し始めると、相手の反応もお構いなしに延々と自分の話をし続けたり、突然話の内容が変わったりします。
 
彼らは自分の行動に何の問題も感じていないし、長話に辟易して逃げられてしまってもそれが何故だかわからないし、突然内容が飛んだように聞こえる話も彼らの中では繋がっているのです。
 
 

アスペルガーの症状 :限定された興味・こだわり

 
ある特定のものに非常に興味を示したり、その人特有のこだわりがあったりというのもアスペルガー症候群の人の特徴的な症状です。
例えば、
 

  • ・車の種類には興味があるが車に乗ることには興味がない
  • ・お気に入りの靴以外は絶対にはかない
  • ・朝起きてから寝るまでに行う行動の順番がしっかり決まっていて、急に予定が変わることを嫌がる


 
といった感じです。
 
アスペルガー症候群の人は興味を持った事柄について、時に専門家になれるほどの深くて細かい知識を持っています。またこだわりのあるものや執着しているものを手放すのを嫌い、親が勝手にお気に入りの靴を捨ててしまうと泣き喚いて怒ったり、ベビーカーにこだわりのある子どもはいつまでもベビーカーに乗りたがったりします。
 
またアスペルガー症候群の人は一日の行動の順番をしっかりと守ります。
 
例えば、「朝ご飯を食べたら歯磨きをして、制服に着替えて学校に行く」という順番を絶対に崩しません。
 
しかし日常生活に不測の事態は付きものです。例えば朝ご飯を食べた後、食器を落として割っていまい、けがをして病院に行かなければならなくなったとします。
 
アスペルガー症候群の人は、けがをしたことについては、ほとんど無反応な態度をとることもありますが、歯磨きをしないまま病院に連れていかれそうになると非常に嫌がって時にはパニックを引き起こします。
 
このように、アスペルガー症候群の人は不測の事態に弱いという特徴があるのです。
 
 

その他の特徴

 
「対人関係の問題」「限定された興味・こだわり」という特徴のほかに、アスペルガー症候群には以下のような特徴があります。
 

  • ・音や光などに対して敏感
  • ・痛みに対する反応(過剰に怖がる、または無関心)
  • ・不器用


 
 

特徴的な症状を理解して正しい支援を

 
アスペルガー症候群は言語や認知の発達の遅れがなく、人によっては成績優秀で、年齢に見合わない豊富な知識をもっていることもあり、なかなか理解されないことが少なくありません。せっかく強みを持っていても、対人関係などの問題で怒られて自尊心を失ってしまうことにもつながりかねません。
 
逆に言えば、きちんとした対応をすればアスペルガー症候群の人は普通以上の成績を出したり、周りと同じように生活していくことも可能です。
 
アスペルガー症候群の人の特徴的な症状を知り、適切な対応をすることが重要です。
 
 

アスペルガーの原因はなに?

 

アスペルガー症候群は、何が原因で発症するのでしょう。
 
じつは原因は未だ明らかになっていません。しかし「脳の機能障害」「遺伝的要因」などが挙げられています。

 

脳の機能障害

 
アスペルガーの原因として現在最も有力なのは脳に機能障害があるという説です。
 
脳のどの部分に機能障害があるのかについては諸説ありますが、1995年頃の研究では前頭葉の限られた領域の損傷や異常がアスペルガーに特有の行動パターンを生み出すことが示唆されています。
 
 

遺伝的要因

 
結論から言ってしまえば、アスペルガー症候群は遺伝的な影響を受けていることを否定できません。親子そろってアスペルガー症候群といったように子どもに遺伝する可能性があります。
 
・アスペルガーは多因子遺伝病
アスペルガー症候群は遺伝子の影響を受けますが、だからといって他の遺伝子が悪いというわけではありません。
 
じつはアスペルガー症候群を含むASD(自閉症スペクトラム)は、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子が関わっていると考えられるのです。
 
このような複数の要因が相乗的に影響しあって遺伝するアスペルガーのような病気のことを「多因子遺伝病」と呼びます。
 
また自閉症スペクトラムの遺伝に関しては、詳細は不明ですが、複数の遺伝子と環境要因がお互いに影響を及ぼし合いながら、脳の神経回路やその働き具合などを変化させ、さらに生活環境からの影響も受けながら特徴的な精神活動を作り出しているのだろうと考えられます。
 
つまり自閉症スペクトラムの一種であるアスペルガー症候群も、複数の遺伝子と環境(例えば親の生活習慣やアレルギーなど)、さらに生まれてからの生活環境のそれぞれが影響していると考えられます。
 
 

アスペルガーと遺伝:遺伝する=悪いことではない

 
「発達障害が遺伝する」とはいいますが、だからといって親の遺伝子が悪いというわけではありません。
 
先ほど紹介したように、アスペルガー症候群は多くの要因が影響する多因子遺伝病です。人間は誰しもが遺伝病に関連する遺伝子を持っていますし、環境によって遺伝子変異が起こることも少なくありません。
 
確かに、アスペルガーの子どもの親は少なからずアスペルガー的な特徴を持っていると多く報告されていますが、あくまで「遺伝子の影響を受けている可能性がある」というだけであり、確実に遺伝するとは限りません。
 
またアスペルガー症候群に関連する遺伝子を持っていても、それだけで発達障害だというわけでもありません。
 
生活を送る上で無視できない困難がない限りは、それは病気ではなく、ただの個人差であり、人間の多様性だと考えることができます。
 
アスペルガーが「遺伝する」という事象だけをピックアップし、悪いもののように扱ったりする必要はないことを確認しておきましょう。
 
 

アスペルガーの遺伝に関連する遺伝子

 

アスペルガーを含む自閉症スペクトラムに関連していると考えられる遺伝子は最近になって多く報告されてきています。これらの遺伝子を見てみると、その多くが脳の神経回路の一部である「シナプス」に関連深いものであることが分かります。
 
シナプスとは神経細胞から神経細胞へ情報を伝達していく接続部分のことで、それにかかわる遺伝子が変化することで脳内での情報伝達機能に大きな影響を与えていると考えられます。
 
しかし関連する多くの遺伝子が報告されてはいますが、その遺伝子をひとつ持っていたからといって必ずアスペルガーを発症するわけではありません。
 
またアスペルガー症候群などASDの患者すべてに共通する遺伝子も発見されていません。
 
 

アスペルガーの特徴と遺伝

 
冒頭で述べたように、アスペルガー症候群の主な特徴は対人関係におけるコミュニケーションの問題や、限定された興味・こだわりです。またそれ以外にも、感覚過敏や不眠、癇癪などの症状もみられます。
 
このようなアスペルガーの症状のすべてが遺伝によるものであるかどうかというと、そう言い切ることもできません。
 

  • コミュニケーション障害
  • 対人関係障害
  • 限られた興味・こだわり
  • 感覚過敏


 
など、脳機能に深く関わりのある障害は遺伝的な要因にかかわりが深いと言えますが、
 

  • 不眠
  • 偏食
  • 癇癪
  • 問題行動


 
などのアスペルガーの症状は、遺伝よりも環境要因の影響が強いと考えられます。
 
 

アスペルガーの治療

 
アスペルガーは、この疾患そのものを治療する方法はまだ見つかっていません。
 
アスペルガーに見られる行動などの特徴はそれぞれの個性であるという見方が広がってはいますが、学校などのコミュニティーでは周りから浮いてしまって辛い思いをするなど、二次障害が起こることが多いです。
 
そこでアスペルガーの治療では、症状そのものへの治療ではなく、二次障害を防ぐことが重要になってきます。
 
 

周囲からの適切な支援を

 
アスペルガーの人はその特性から突飛な行動をとっていると判断され周りから浮いてしまいがちですが、適切な支援を受けることができればよりスムーズに生活できるようになります。

 

周囲の人はアスペルガーについて正しく理解し、「生きやすい環境設定」や適切な社会行動を学べるようなサービスを勧めるなどして、二次障害を防ぐことで当人の生きづらさを改善することができるはずです。

 
 
◆生きやすい環境設定の例
 

  • ・伝達事項は口頭だけでなく、イラストなど視覚的情報も用いる
  •  

  • ・いつもとは違う予定が入る場合にはなるべく事前に伝えて心の準備をさせる
  •  

  • ・出したものを戻す場所がわかるように表示する
  •  

  • ・デイケアやロールプレイングなどで適切な社会的行動を練習する

 
 

他の精神疾患が併発している場合

 
アスペルガーは時折、うつ病やADHDなど他の疾患を併発することがあります。
 
その場合には、併発している疾患の症状に合わせた支援や薬物治療、認知行動療法による治療によって症状を抑えることがあります。
 
 

アスペルガーに関する様々な視点

 

アスペルガーと自閉症の違い

 
IQが70以上で知的障害を伴わない自閉症のことを高機能自閉症といいますが、アスペルガー症候群と呼ぶこともあります。
 
呼び方が異なるため、2つを違う障害と認識されることもありますが、アスペルガー症候群は自閉症とひとつながりであり、切り離して考えるものではありません。
 
自閉症は、IQが70以下の低機能自閉症(カナー症候群)のケースが多いです。
 
そのため一般的に自閉症という場合は、低機能自閉症(カナー症候群)のことを指していると考えてよいでしょう。
 
いずれにしても診断が難しく、大人になってから気がつくことも多い障害ですので、思い当たる節があったら早めに児童精神科や小児神経科の医師、保健所、療育センター、児童相談所、教育相談所へ相談することをおすすめします。
 
(自閉症についての詳細はMocosuku運営姉妹サイト「自閉症の診断 はどのように行うのか? 診断基準と検査の方法とは?」を参考になさってください)
 
 

アスペルガーとADHD(注意欠陥・多動性障害)の違い

 
アスペルガー症候群は、ADHDと行動上の外見が似ていますし、実際の臨床現場でも判別が難しいと言われています。
 
特徴的な部分でいえば、人間の情報処理について、「入力」と「出力」の2つを考えるとわかりやすいです。入力とは「外からの情報を取り入れるときの方法(理解や感覚など)」で出力とは「情報を発信する方法(説明や反応など)」と考えた場合、ADHDは出力の異常だけですがアスペルガーは入力と出力両方に異常がある状態です。
 
例えば、対人関係でADHDが思ったことをすぐ口に出し、相手を傷つけたと後悔するのに対し、アスペルガー症候群はそもそも他人の気持ちや場の空気を読み取れません。相手が傷ついたことに気がつきません。
 
成人してからもADHD症状が目立つ人は、多くの場合、アスペルガー症候群(自閉症)も合わせ持っている傾向があるそうです。
 
(ADHDについての詳細はMocosuku運営姉妹サイト「ADHDの特徴とは。 シーン別、大人 / 子ども別に解説」を参考になさってください)
 
 

アスペルガーの受動型

 
アスペルガー症候群のうち、自分で判断が出来なくて周囲の人の意見に流されやすい場合を「受動型」と言います。
 
特徴としては、言葉が少なく物静かだと思われていますが、自分で判断して行動が出来ないので、積極的に他人に話しかけるとか、気を利かせて動くということが出来ません。
 
物事に対して問題意識も低い為、善悪の判断がつかず、皆の意見に流されて良くない行動をとってしまうこともあります。
 
 

アスペルガーの積極奇異型

 
積極奇異型は賑やかです。落ち着きがないのでADHDと間違われます。積極的に他人と関わっていくのですが、話題は一方的で相手の話は聞いていません。
 
相手の反応を気にしないで交流を求めるので、他人が困っていることに気づかないだけでなく、悲しんでいる人にも笑顔で話しかけてしまいます。感情は喜怒哀楽がはっきりしていて、過剰なほどの感情表現を行います。
 
 

アスペルガーの孤立型

 
ひとりでいるのが当然で、集団の中で誰とも話していないことにも気づいていません。集団の中にいても、好きなことにひとりで取り組むタイプのアスペルガーを「孤立型」と言います。
好きな科目の勉強があると偏ってその成績は良いか、全教科も自分ルールで勉強して好成績をとります。
 
おとなしい優秀な子として評価され、壁にぶつかるのは社会に出てからです。
 
対人関係が苦手と気付かないほどのマイペースなので、空気を読んで皆と同じ行動をしなければならない職場や、他人の段取りまで配慮しなければならない仕事、阿吽の呼吸で合わせて仕事をする職場では、困難を感じます。
 
 

アスペルガーはギフテッド?

 
ギフテッドとは、「ある文化の中において価値があると定義される分野で、高い生産性を持つ人」のことです。アスペルガー症候群の幼児には、優れた記憶力を持ち、難しい言葉を使いこなす人がいます。
 
自分の興味を持ったことを集中して追求し続けて他人が声をかけても無視してしまうため、集団の中ではしばしば孤立します。
 
このアスペルガー症候群の特徴がギフテッドの持つ特徴と似ているため、ギフテッドの子供にアスペルガー症候群の診断がつくこともあります。
 
 

サヴァン症候群

 
1887年、イギリス人の医師ダウンは、重度の精神障害を持っていても、ある特定の分野で飛びぬけた能力を発揮する患者を「サヴァン症候群」と名づけました。
 
最初は idiot savant (天才的白痴)と呼びましたが、差別的だということで「サヴァン症候群」という名で落ち着いたそうです。フランス語の「知る」が語源です。
 
最初は驚異的な記憶力が注目されましたが、たとえば、何年も先の年月日を聞いただけで曜日を言い当てるとか、並外れた計算力、効いただけで音楽を再現できるなど、今では、多様な分野で、発達障害でありながら天才的な能力を発揮する人たちのことを指しています。
 
 

アスペルガーの特徴と天才性

 
アスペルガー症候群も含めて一般に自閉症は、社会的には、「社会性の未熟さ」「コミュニケーションの障害」「常同行動」などのハンディキャップを抱えていると理解されています。
 
とくに、パターン化した興味や活動としての「常同行動」は、興味の対象が独特で変わっているとか、こだわりが強くて融通が利かない、「障害」ととらえられがちですが、それが逆に、他の常人にはなしえない「特異な能力」と認知されると、サヴァン症候群とみなされることになります。
 
サヴァン症候群はアスペルガー症候群や自閉症など「自閉症スペクトラム症」における天才性(脳)ということができるでしょう。
 
 

アスペルガーの特徴を活かして成功した例

 
アスペルガー症候群の名付け親ハンス・アスペルガー医師がすでに、変わった子供たちの特異な能力に着目していました。
 
アスペルガー症候群を「生きづらさ」としてよりも、その特異な能力を発揮して、事業や社会をリードした人も決して少なくありません。
 
たとえば歴史学者のアインシュタイン、マイクロソフトの生みの親ビル・ゲイツ、イギリス人歌手スーザン・ボイルなど、著名人にも少なくありません。
 
また、専門家たちの間では、アスペルガー症候群は別名「シリコンバレー症候群」とも呼ばれているそうです。
 
先端科学、IT産業、また、音楽や絵画など芸術の世界では、変わり者の天才たちが活躍する場は幾らでもあるようです。
 
 

アスペルガーの診断

 
アスペルガーの診断では症状の特徴が日常的にみられるのか、その症状が日常生活に支障をきたしているかどうかを調べます。
 
 

コミュニケーションの困難さについて

 
アスペルガーの人は社会的な行動に大きな特徴が見られます。その喋り方や行動は時に、いわゆる「空気を読まない」ものであったり、「変わっている」という印象を与えたりします。そのような社会性の欠陥はコミュニケーションを困難にします。
 
このような社会性・コミュニケーションに関して、1987年にカリーナおよびクリストファー・ギルバーグの二人が設定した診断基準を以下に示しました。
 

  • A)  対等の仲間関係を作る能力に欠ける
  •  

  • B)  対等の仲間関係を作ろうとする意欲に欠ける
  •  

  • C)  人からの社会的サインの理解に欠ける
  •  

  • D)  社会的・感情的に適切ではない行動

 
これらの項目のうち2つに当てはまる場合、アスペルガーの可能性があるとされています。
 
上記の4項目は社会的行動に関するものですが、ジャスチャーなどの非言語的コミュニケーションにおいても基準が設定されています。
 
 

  • A)  身振りを示すことが少ない
  •  

  • B)  不器用/ぎこちないボディランゲージ
  •  

  • C)  表情が乏しい
  •  

  • D)  場面に応じた表現ができない
  •  

  • E)  視線が奇妙で、他人行儀である

 
アスペルガーの人には以上のうち少なくとも1つが見られます。
 
 

想像性の障害

 
この特徴について調べる方法に、誤信念課題というものがあります。
 
これは心の理論課題とも呼ばれ、「相手の考えを理解する=心を読み取る」という技能を獲得できているかどうかを査定するためのものです。

 
このテーマでよく用いられるものに、「サリーとアンの『心の理論』課題」があります。

 

「サリーとアンの『心の理論』課題」のストーリー

  • 1. サリーとアンという二人の女の子がいます。
  •  

  • 2. サリーはバスケットをもっており、案は箱をもっています。
  •  

  • 3. サリーは、宝物をバスケットに入れて出かけてしまいました。
  •  

  • 4. アンは、サリーがいない間に、サリーの宝物を、バスケットから自分の箱に移しました。
  •  

  • 5. サリーが帰ってきて、宝物を取りだして遊ぼうとしています。

 

【質問】
サリーはどこを見るでしょうか?
 
 

このテストでは以下のストーリを図示したものを見せて、質問し、「相手の立場に立って考えられるかどうか(相手の気持ちを想像できるか)」を評価します。
 

サリーの宝物はアンの箱の中に移し替えられていますが、サリーは出かけていたのでそのことを知りません。
 
よって帰ってきたサリーが宝物を取り出すために最初に見るのはバスケットのはずです。多くの人は簡単にその事実を理解することができるでしょう。

 
しかしアスペルガーの子どもは、知的な遅れがないのにもかかわらず正答できないことがあります。
 
彼らは「アンが宝物を箱に移し替えたために、バスケットの中には何も入っていない」ことを知っていますが、「その場にいなかったサリーは知らない」といことを理解できないのです。

 
 

限定された興味・こだわり

 

ギルバークらはアスペルガーの特徴のひとつ、「限定された興味・こだわり」に関しても言及し、いくつかの基準を設定しています。アスペルガーの人は以下の項目のうち少なくとも1つに当てはまるとされます。

 

  • A)  他の活動を受け付けない
  • B)  固執を繰り返す
  • C)  固定的で無意味な傾向

 

【DSM-4における診断基準】
 アスペルガーのような発達障害について、その診断基準は米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」に掲載されている者が世界的に広く用いられています。DSMは頻繁に改訂を繰り返していますが、アスペルガー症候群の診断基準はその第4版、通称DSM-4に掲載されているものが使用されています。

 

《診断基準》
 
A. 社会性・対人コミュニケーションに関する以下の項目のうち少なくとも2つにあてはまる。
(1) 目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、コミュニケーション上の非言語的行動に著明な障害がみられる(例:話すときに目を合わせない、無表情など)
(2) 発達の水準に合った仲間関係を作ることの失敗
(3) 楽しみ、興味、達成感を他人と分かち合うことを自発的に求めることの欠如(例:他の人達に興味のある物を見せる、持って来る、指差すなどをしない)
(4) 対人的または情緒的相互性の欠如

 
B. 行動、興味および活動について、以下の少なくとも1つに当てはまる。
(1) 異常なほど、限定された興味・対象だけに熱中すること
(2) 特定の習慣や儀式にかたくなにこだわる
(3) いつも同じような身体の運動を繰り返す(例:手や指をぱたぱたさせたり、ねじ曲げる、または複雑な全身の動き)
(4) 物体の一部に持続的に熱中する
 
C.その障害は社会的、職業的、または他の重要な領域において困難を引き起こしている
 
D.臨床的に著しい言語の遅れがない(例:2歳までに単語を用い、3歳までにコミュニケーション的な句を用いる)
 
E.認知の発達、年齢に相応した自己管理能力、(対人関係以外の)適応行動、および小児期における環境への好奇心について臨床的に明らかな遅れがない
 
F.他の特定の広汎性発達障害または統合失調症の基準を満たさない

 
 

家族や恋人がアスペルガーだった場合の接し方

 
自閉症スペクトラムの中でも、知的遅れがなく、ことばの発達も遅れていない「アスペルガー症候群」。
 
「シリコンバレー症候群」とも呼ばれるように、先端科学や工業技術、IT産業などの発展に欠かせない人材が多いといわれる反面、対人関係ではとくに、周囲の人たちと摩擦を起こし、自身も消耗してしまうことも少なくありません。
 
家族や恋人など身近にいる人たちはどのように接していったらよいのでしょうか。
 
精神科医の岡田尊司さんの指摘を参考にポイントをまとめてみました。
 
 

枠組みをしっかり作り、ルールをはっきり示す

 
自分の気もちや意欲に忠実なあまり、相手の都合や状態に関係なく、一方的な行動に走ってしまい、社会生活に支障をきたしたり、社会常識を知らない未熟な人と思われてしまいやすいアスペルガー症候群。
 
でも、ルールや約束ごとはきちっと守ろうとするので、ハッキリとしたルールをつくりましょう。
 
そして、たとえばルールを紙に書いて壁に貼っておくなど「見える化」も効果的です。
 
反対に、暗黙のルールや例外、気まぐれな対応や場当たりの変更などが多いと、本人は混乱してしまいます。また、ルールに対しては一貫した態度・対応をとることが大切です。
 
 

過敏性に配慮する

 
周囲の雑音、声、BGM、照明、香水のにおいなど、生活上のさまざまな刺激が、周囲にとって何でもなくても、アスペルガー症候群の人には、感覚が敏感なために、場合によっては苦痛に感じられることがあります。
 
しかも、そのことを言えなくて、我慢を続け、疲れ果て、パニック障害になってしまうような事例も起こります。
 
ですから、本人にとってできるだけ居心地の良い環境を整えることが重要になってきます。
 
そうはいっても、本人だけのために環境整備をすることはできない場合もあるでしょう。そんな場合は工夫や努力も必要になってきます。
 
騒音に対しては耳栓とか、視覚が過敏なら色付きのメガネを装用するとか、弱い刺激を与えて、強い刺激に慣れていく(脱感作といいます)トレーニングをするなどが考えられます。

 
 

本人の特性を活かす

 
優れた能力を持っていても、自分から上手にPRすることができず、かえって、社会性の未熟さの方がめだって、変わり者扱いされたり、無能力だと思われていたりすることも少なくありません。
 
ですから、周囲の人たちが本人の優れた特性への理解者・賞賛者になってあげることが不可避です。実際、アスペルガー症候群で成功した人たちには、よき理解者と出会えたことが指摘されています。
 
本人の優れた点を見出すだけでなく、その能力を社会の中で活かしていけるように、指導、トレーニング、バックアップすることも、次に必要になってきます。
 
また、このタイプはいくつかの仕事を同時にこなすマルチタスクを極端に苦手とする傾向が強いので、いわゆる“一芸に秀でる”取り組みを奨励することで可能性が拡がっていくでしょう。
 
さらに、本人のこだわりが周囲と対立しないように、身近な人が配慮して調整をしていく必要もあります。

 
 

弱い部分を上手にフォローする

 
時間を守る、約束に間に合う、定時で終わるなどの時間管理、周囲にヘルプしてもらう(協力する)、効率的に物事を進めていくなど、仕事や組織で重要とされている取り組みに弱いのが、アスペルガー症候群の社会性の特徴でもあります。
 
独りで、自分のやり方で、自分のこだわりに忠実であることが、こうした社会性の苦手・弱みをつくりだしています。つまり、自分の行為や時間など、マネジメントを苦手とするということです。
 
こうした事態を避けるために、できるだけ早くから、困ったときに助けを求めるようなスキルを身につけさせる、周囲も本人の不器用な要求に対してサポーティブにフォローしていく寛容さが大切になってきます。
 
 

トラブルを力に変える

 
悪気なく人の邪魔をしたり、相手にお構いなく自分の話をし続けたり、思い通りにならないと攻撃的になったりといった問題行動が起こることは少なくありません。

 
とくに大人になってくると、親しい人に感情をぶつけたり、極端な場合は暴力をふるったり、独りよがりな恋愛感情をもったり、ストーカーまがいの行動に出てしまったりといったことも指摘されています。
 
こうした事態に対して、曖昧な言い方を避け、明確なルールを示し、適切な対処を学んでもらうよう働きかけることが成長につながります。さまざまな問題行動にたいして、周囲が感情的になったりする過剰反応をせず、冷静に、しかし、毅然として接することも求められます。
 
こうした対人的成熟は周囲にとっても難しいことでしょう。
 
ですから、さまざまな勉強会にでたり、相談・支援活動に参加したりして、接し方を学び続けることが必要となってきます。

 
 

【参考文献】
東京都自閉症協会『「アスペルガー症候群を知っていますか?」Web版・日本語』
・田中康雄(こころとそだちのクリニックむすびめ院長)・藤森和美(武蔵野大学人間科学部人間科学科教授)・辻惠介(武蔵野大学人間科学部人間科学科教授)(2014).発達とキャリア支援 金剛出版 pp.11-12
・Brenda Smith Myles(カンザス大学教育学部特殊教育科准教授)& Jack Southwick(カンザス大学社会福祉学部修士課程講師)(2002).アスペルガー症候群とパニックへの対処法 東京書籍 pp.7-34
All about 健康・医療『アスペルガー症候群とは? 特徴・診断・接し方』
・岡田尊司『アスペルガー症候群』幻冬舎新書、2010.
 
 
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが・かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属。社会心理学や人間関係をテーマとした執筆活動を行っている
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 
 

編集部オススメリンク(外部リンク)

 
関連した情報として以下のものがあります。ご参考にしてください。
 
◆厚生労働省が運営する、生活習慣病予防のための健康情報サイト『e-ヘルスネット』では、
アスペルガー症候群について詳しく紹介しています。
 
◆また同じく厚生労働省が運営する、発達障害の理解のためにでは「発達障害者支援法」と、具体的な支援法について紹介しています。
 
◆Mocosuku運営の姉妹サイト
 
「発達障害のチェック は、どのようにして行う? チェック方法について解説!」
 
自閉症スペクトラム (ASD)とアスペルガー症候群との関係は?
 
「ADHDの原因 ってなに?脳の機能障害?遺伝も関係するの?」
 
「ADHDの特徴 って?シーン別、大人/子ども別に解説!」
 
「ADHDの治療 って?薬物療法、心理療法など治療法を解説!」
 
「統合失調症の症状はどういうもの? 具体的な内容と対策まで」
 

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